山梨県の名物と言われて誰もが最初に思い浮かべるのは “ほうとう鍋”。しかし最近は富士河口湖町の飲食店が共同で開発した“富士まぶし”という新名物もあります。
ニジマスを使用したとんでもなく美味しい料理なのですが、「淡水魚ってクセがあるんでしょ?」というイメージや、このSNS時代にいまいち写真映えしない見た目な事もあってか、なかなか流行りません。
実はこの記事を書く数日前、仮眠中に富士まぶしの夢を見た私はどうしても富士まぶしが食べたくなり、そのまま仕事を切り上げ、往復4時間富士まぶしを食べるためだけに河口湖まで車を走らせました。
1食のためだけに仕事終わりに往復4時間運転できる、そのくらい美味しい富士まぶし…とにかくもっともっと流行って欲しい、この美味しさをもっと知って欲しい、その一心で筆を取りました。
富士まぶしとは
富士まぶしをざっくり説明するとニジマスの炊き込みご飯です。そこに薬味やお出汁をかけ、味変しながら楽しみます。(名古屋のひつまぶしのようなイメージ)
富士まぶしには品質維持のため使用食材や調理方法にルールが設けられており、とにかく調理に手間暇が掛かっています。例えばニジマスは小骨まで全て取り除き、米粉で揚げてから土鍋で炊き込むこと、など。
文章で説明するよりまずは写真を見ていただきましょう。
富士まぶしミニ懐石(割烹 七草)
富士まぶし提供店はいくつかあるのですが、その中でも私のお気に入りは“割烹 七草”さん。ここのお料理は本当に丁寧で美味しくて、富士まぶし云々以前に割烹屋さんとして普通に好きです。
先付け・馬刺し(魚に変更可)・七草揚げ餅・焼き物・南瓜饅頭べっ甲飴かけ・富士まぶし・甘味のボリューミーなコースが3,300円2名から。
先付け
まずは先付けの湯葉豆腐。わさびで食欲が増進されます。
馬刺し
タレはニンニク醤油と塩ごま油の2種類。
馬刺しが苦手な場合は魚のお刺身への変更も可能です。
私はお魚も食べたかったので別で注文しました。
海なし県山梨のお店だけどお刺身も美味しい…!
七草揚げ餅
七草名物の揚げ餅。
カリふわっと揚がったお餅の中には筍、人参、椎茸、昆布などが。温かい大根おろし入りの出汁がかかっています。
焼き物
焼き物のお魚はその日によって。
南瓜饅頭べっ甲飴かけ
南瓜の甘味とお出汁の風味がマッチした一品。
富士まぶし
そしてお待ちかねの!富士まぶし!!!
この状態で出てきて、店員さんがいい感じに混ぜて取り分けてくれます。
本当に川魚へのイメージが変わります。
「ニジマスだよ」と言わずに出したらニジマスだと気付かない人も多いのではないでしょうか。
そのくらい下処理の技術がすごいのです。
薬味は季節によって変わりますがこんな感じ。貴重なニジマスのいくらや、地元産のふきのとうを使った蕗胡椒、自家製ネギ味噌、そしてお出汁など。薬味をもっと堪能したいのにご飯がなくなってしまった…なんて場合も白米なら追加できます。
甘味
撮り忘れ。美味しい果物とプリンでした。
日本酒
帰りの運転は同行者に任せて私は河口湖の酒蔵の日本酒を。
まろやかなアルコール感で非常に飲みやすかったです。
富士まぶしは提供ルールが結構厳しい
富士まぶしは品質やブランドを守るため、細かい提供ルールが定められています。そのため提供が難しく、提供店が増えないことも流行らない一因かもしれません。しかしここまでしっかりしていると、食べる方としてはとても安心です。
「富士まぶし」の基本定義
定義1:「炊き込みご飯で食べる」「薬味を入れて食べる」「出汁をかけてお茶漬け風に食べる」という3つの食べ方が楽しめること
定義2:富士山の伏流水育ちの鱒(ニジマスorヒメマス)を使用すること
定義3:富士山麓の旬の味覚を取り入れた薬味を添えること
・富士山の伏流水育ちのニジマスまたはヒメマスを使用し、米粉で揚げてから炊き込むこと。
・ニジマスを使用したものを「富士まぶし」、ヒメマスを使用したものを「富士姫まぶし」と称する。
・炊き込みご飯は土鍋で提供することを原則とする。
・和風出汁での味付けを原則とする。
・炊き込みご飯は鱒の姿を崩さずに提供し、客席に出してから混ぜること。
・旬の薬味を3種以上付けることとし、できるだけ富士山麓の旬が感じられる薬味を付ける(春はふきのとうと柚子胡椒を合わせた蕗胡椒を付け、他の季節はあさつき、みょうが、かいわれ等を添える)。
・炊き込みご飯、薬味、出汁の基本セットで、「富士まぶし」は2人前¥1,600、「富士姫まぶし」は2人前¥2,400を標準価格(目安)とし、小鉢などを組合せた価格設定は各自自由とする。
詳しくは富士山麓んめぇ~もん倶楽部のサイトをご覧ください。
とにかく富士まぶしの知名度を上げたい
最近は写真映えでお店を選ぶ人も多いのですが…富士まぶしは本当に映えません…。ネットでこの写真が流れてきてもスルーしてしまう人が多いはず。でも本当に美味しいのです。仕事終わりに長距離運転を頑張ってよかった、そう思える美味しさです。
そしてこの懐石コースが1人3,300円というのも信じられません。私は割と日本料理店さんに行く方なのですが、割烹七草の料理はどう考えても5,000円以下で出てくる料理じゃないのです。1人8,000円くらい取ってくれてもいい、そのくらいどの料理も手間暇かけて作り込まれています。
山梨県でご当地グルメを味わおう!となった際にはぜひ、富士まぶしも候補に入れてくださると嬉しいです。
店舗情報
割烹 七草
〒401-0301
山梨県南都留郡富士河口湖町船津1667-1